薬品知識

バルトレックスと性器ヘルペス|飲み方や治療にかかる期間、疾患について解説

性器ヘルペスとバルトレックス

バルトレックスを使った性器ヘルペスの治療

用法用量
1回の用量500mg錠の場合 … 1錠
1000mg錠の場合 … 1/2錠
(バラシクロビルとして500mg)
1日の服用回数2回
服用期間5~10日間

性器ヘルペスの治療におけるバルトレックスの服用期間は5日間です。5日間服用しても、症状の改善が見られない場合にはバルトレックスとは別の治療法への変更が必要になります。
初発型(初めて感染して発症)の性器ヘルペスに限り、重症化しやすいという理由から、バルトレックスの服用期間を10日間まで延長できます。

治癒までの期間を1週間ほど短縮します。

服用から治癒までに要する期間については、性器ヘルペスの症状やバルトレックスを飲んだタイミングによって異なります。
重症化しやすい初発型の性器ヘルペスに対して、バルトレックスのような抗ウイルス薬を用いた場合、1~2週間で治癒するようです。

2~3週間で自然治癒するが、抗ヘルペスウイルス薬を投与すれば1~2週間で治る。

引用:性感染症 診断・治療 ガイドライン 2016

バルトレックスを用いることで、自然治癒に任せた場合と比べて治癒までの期間が1週間程度短縮していることが分かります。

そもそも自然治癒するとはいえ、 性器ヘルペスの初発時における治療の有無は、その後の再発頻度を大きく左右するといわれています。
最もウイルスの増殖が盛んに行われる初発時にバルトレックスを用いてしっかりと治療することで、神経に潜り込むウイルスの数が減り、再発しにくくなるようです。

早期の服用によって再発を予防できます。

再発性の性器ヘルペスは比較的に症状が軽度であり、無治療でも1週間以内に症状が治癒します。バルトレックスを用いることで病期をどれくらい短縮できるのか?を示す文献は見つかりませんでしたが、早期にバルトレックスを服用することで性器ヘルペスの発症を予防する効果が得られるようです。

再発の前駆症状である局所の違和感や神経痛様の疼痛があるときに本剤を服用すると、病変の出現を予防できることがある。

引用:性感染症 診断・治療 ガイドライン 2016

性器ヘルペスの再発を繰り返している方では、再発の前兆として患部にムズムズとした違和感やチクチクとした痛みを感じることがあります。そのような再発の前兆を感じた時点でバルトレックスを飲むことで、水ぶくれやブツブツといった病変の出現を予防できることがあるようです。

逆に服用のタイミングが遅れてしまうと、再発性の性器ヘルペスにはバルトレックスを使ってもあまり意味がないようです。

発症してから1日以内に服用を開始しないと、有意な効果が得られない。
(中略)
早めに服用させるが、6時間以降では抑制率が20%に低下する

引用:性感染症 診断・治療 ガイドライン 2016

発症から24時間を過ぎると効果が得られなくなるどころか、6時間を過ぎた時点で既にバルトレックスの効果が8割減してしまうようです。

バルトレックスを早く飲むことが、性器ヘルペスを治療する上で極めて重要であることが分かります。こういった理由から、バルトレックスを個人輸入して備えておく人もいます。

性器ヘルペスとは

主な症状は性器周辺に生じる水ぶくれやブツブツです。

性器ヘルペスは、男性と女性で症状が違います。共通しているのは、ブツブツとした発疹や水ぶくれ等の病変が陰部に生じることと、初感染時には重症化しやすいことです。初めて感染して発症した場合、38度以上の高熱や激しい倦怠感、 足の付け根のリンパ が腫れるなど激しい症状がみられます。病変部には痒みや強い痛みを伴います。

男性の性器ヘルペスでは、亀頭や包皮など陰茎の周辺に水ぶくれやブツブツができます。痛みだけではなく痒みも存在しますので、汚れた手で患部を触ったりすると症状が悪化する可能性もあります。
稀に尿道から痛みとともに分泌物が少量出ることもあります。分泌物がでるようなケースでは、性器ヘルペスが重症化している可能性があります。肛門周辺や直腸粘膜などにも病変が及ぶこともあります。

女性の性器ヘルペスでは、発疹が外陰部や膣内、尿道口などに生じます。初感染時の症状が男性よりも重くなる傾向があります。痛みによって排尿や歩行が困難となることもあります。日常生活に支障を来す場合には、入院が必要となります。女性は性器の構造上でウイルスが体内に侵入しやすい仕組みになっていることが関係していると考えられています。

原因は性行為を介したヘルペスウイルスへの感染です。

性器ヘルペスの感染経路のほとんどは、性行為によるものです。ただ、直接的な感染経路がそれというだけであって、間接的な要因が全て性行為というわけではありません。

実際に性器ヘルペスの原因となっている病原体は、口唇ヘルペスを発症させるものと同じです。一応、 主に上半身に感染しやすい1型、下半身に感染しやすい2型という分類が存在しますが、いずれも性器ヘルペスの病原体になり得ます。そのため、口唇ヘルペスの人がオーラルセックスを行うことにより、パートナーの性器ヘルペスが発症するといったことも起こります。

この病原体はとても感染力が強く、日常生活を送っていたとしても容易に他の人に移してしまいます。代表的な行為が、家族の中で使い回しでタオルや食器を利用することです。タオルや食器に付着している粘膜から病原体が他の家族の中の誰かに移ると、その影響で口唇ヘルペスが発生するリスクが生まれます。そして、口唇ヘルペスを発症させている人がパートナーに感染させることで性器ヘルペスが発症します。

生涯に渡って再発を繰り返します。

性器ヘルペスの原因となっている単純ヘルペスウイルスは、完全に体内から駆逐することができない現状です。病原体の活動を抑えるための医薬品は提供されているのですが、これは体内に残存しているウイルスを駆逐するものではなく、あくまでもその症状を緩和させるためのものにすぎません。そのため、一度でも性器ヘルペスになった方は、何度でも再発するリスクが存在します。

この再発リスクは、その患者の免疫力に依存します。例えば、日常生活を送っていて食生活が乱れたり睡眠時間が削られたりすると、疲れやストレスが溜まります。このような状態のときに、治療したはずのヘルペスが発症します。これは、感染した病原体が三叉神経という部分に普段は潜んでいるからに他なりません。

免疫力が正常なときには、ウイルスは活動することができませんのでこの三叉神経という部分で人間の健康状態が悪くなるのを待っています。そして、免疫力が低下して健康状態が悪化してくると、三叉神経から顔の表面に近い神経を利用して近寄っていき、活動を活発化させていきます。

このような背景があるため、再発頻度に関してはその患者の健康状態に依存する傾向があります。場合によっては、1年間で6回以上も再発する患者も存在します。そういった人には、バルトレックスを用いた再発抑制治療などの特別な医療措置が選択されます。再発の頻度が多い場合には、病院に行って医師に相談しましょう。