日本で承認されている「バルトレックス錠500」の添付文書や、その他公的な資料の記述を噛み砕いて、バルトレックスの飲み方に関する疑問を分かりやすく解説しています。
なお当ページで解説するのは、成人における性器・口唇ヘルペスおよび帯状疱疹に対するバルトレックス錠を用いた治療の飲み方に関する情報に限ります。
Contents
基本的な用法用量は?
バルトレックスの用法用量は、治療の対象となる疾病によって異なります。
単純疱疹:
引用:バルトレックス錠500 添付文書より
通常、成人にはバラシクロビルとして1回500mgを1日2回経口投与する。
(中略)
帯状疱疹:
通常、成人にはバラシクロビルとして1回1000mgを1日3回経口投与する。
単純疱疹とは、単純ヘルペスウイルスによる感染症を指します。つまり、性器・口唇ヘルペスがこれに含まれます。
単純疱疹では1回につき500mgとされているのに対して、帯状疱疹では1回につき1000mgの服用とされています。
バルトレックス500には、1錠中に有効成分バラシクロビルが500mg含まれています。よって1回に飲む錠数は単純疱疹で1錠、帯状疱疹で2錠となります。
1日における服用回数は単純疱疹が2回なのに対して、帯状疱疹では3回になります。帯状疱疹の方が1回分増えますので、気を付けましょう。
1000mg錠では1回に飲む錠数が変わります。
個人輸入できるバルトレックスには、日本の標準規格と同じ500mgの他、1000mgの規格が存在します。
500mgでは上記で紹介した用量と同じで問題ありませんが、1000mgの場合では、1回に服用する錠数が半分になります。
つまり、1回につき単純疱疹では1/2錠、帯状疱疹では1錠を服用します。1日の服用回数に関しては変わりません。
服用日数はいつまで?
バルトレックスの服用日数に関しても、疾病により異なります。
単純疱疹では5日が基本で、最大10日間まで延長します。
性器ヘルペス・口唇ヘルペスが含まれる単純疱疹の服用日数に関して、添付文書に以下ように記述されていました。
単純疱疹の治療においては、本剤を5日間使用し、改善の兆しが見られないか、あるいは悪化する場合には、他の治療に切り替えること。ただし、初発型性器ヘルペスは重症化する場合があるため、本剤を10日間まで使用可能とする。
引用:バルトレックス錠500 添付文書より
単純疱疹における基本的な服用日数は5日間です。もし5日間飲んでも症状が良くならなかったり、悪化した場合には、違う治療法に切り替える必要があるようですね。
また症状が重症化しやすいという理由から、性器ヘルペスが初めて発症した時に限り、服用日数を10日間まで延長できるとも記されています。
帯状疱疹では7日間が基本です。
帯状疱疹に服用日数に関して、添付文書に以下ように記述されていました。
帯状疱疹の治療においては、本剤を 7 日間使用し、改善の兆しが見られないか、あるいは悪化する場合には、他の治療に切り替えること
引用:バルトレックス錠500 添付文書より
帯状疱疹では7日間服用して、症状が改善されなかった場合には他の治療法に切り替える必要があるようです。
いつ飲み始めるの?
バルトレックスは早めの服用が大切です。発症から服用までの時間が短ければ短いほど、治療効果も高くなるようです。目安として、帯状疱疹では皮疹が出現してから5日以内に服用を始めることが望ましいと記されています。
添付文書には単純疱疹の服用開始時期に関する目安は記されていませんでしが、日本性感染症学会が発行しているガイドラインに性器ヘルペスについて以下の記述がありました。
発症してから1日以内に服用を開始しないと、有意な効果が得られない。
(中略)
再発の前駆症状である局所の違和感や神経痛様の疼痛があるときに本剤を服用すると、病変の出現を予防できることがある。
(中略)
早めに服用させるが、6時間以降では抑制率が20%に低下する
引用:性感染症 診断・治療 ガイドライン 2016より
これは性器ヘルペスの再発に対する抗ウイルス薬を用いた治療に関する記述です。
性器ヘルペスの発症から6時間以内にバルトレックスの服用を始めることが望ましく、遅くとも1日以内に服用しないと意味のある治療効果が得られないとのことです。
また再発前にある違和感や神経痛を患部に感じた段階で服用を始めることで、発症そのものを抑えることができるとも記されています。
食前か食後か?
バルトレックスは成分の吸収に食事の影響は受けにくいようです。
食事により血漿中のアシクロビルの最高血漿中濃度到達時間は僅かに遅延したが、AUCに有意な差を認めなかった。
引用:バルトレックス錠500 インタビューフォームより
AUCとは血中における薬物濃度の推移を表しています。AUCに差が認められなかったということは、バルトレックスの吸収ひいては薬効に影響がなかったことが示されています。※バルトレックスの有効成分バラシクロビルは、体内でアシクロビルという成分に変換されます。
つまり、バルトレックスの飲み方に関して、食前・食後を気にする必要がないことが示されています。
服用間隔はどれくらい空ける?
服用間隔に関しては、1日2回服用の単純疱疹では12時間、1日3回服用の帯状疱疹では8時間を目安とする記述があります。
【モデルケース】
単純疱疹
朝7時に1錠目を服用、夜19時に2錠目を服用
帯状疱疹
朝7時に1錠目を服用、昼15時に2錠目を服用、夜23時に3錠目を服用
ただ実際に処方された際には、薬剤師から朝晩や朝昼晩などといったざっくりとした指示が出されることが多いです。目安はあくまで目安なので、服用間隔をきっちり一定に保たなければならないという訳でもなさそうです。
飲み忘れたらどうすればいい?
バルトレックスを飲み忘れた際の対処については、厚生労働省が管轄している医薬品医療機器総合機構であるPMDAが発行している「患者向医薬品ガイド」に記載がありました。
飲み忘れた場合は、気がついた時点ですぐに1回分を服用してください。ただし、次に服用する時間が近い場合は服用しないで、その後は指示された時間から服用してください。2回分を一度に飲んではいけません。
引用:バルトレックス錠 500 患者向医薬品ガイドより
飲み忘れてから時間の経過が少ない場合はすぐに飲めば問題ありませんが、次の服用時間が迫っている場合には医師に飲み方を指示してもらう必要があるようですね。
「次に服用する時間が近い」とは、実際にどれくらいなのか?具体的な時間については、言及されていませんでした。情報が具体的でない以上、最終的には医師に相談する他なさそうです。
いずれにせよ、飲み忘れたからといって、2回分にあたるバルトレックスをまとめて飲むことだけは止めましょう。